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「牛乳飲まず、牛肉食べず」 不思議な酪農王国・北海道考


「牛乳34位」「牛肉37位」。この数字は一世帯あたりの年間消費量の47都道府県ランキングだ。北海道の生産者にとっては非常に残念な〝通信簿〟である。

日常食卓に上る食肉の使用頻度から「牛肉37位」には肯かれる道民は多いだろうが、「牛乳34位」には「意外だ」と思う道民が多いのではないか? 全国一の産地であっても、牛乳も牛肉もあまり摂らない道民の食習慣とはいったい何であろうか?

北海道は全国シェア50%超の酪農業が盛んだ。当然のことながら肉牛飼育頭数も全国一となる。生乳はホルスタイン牛から搾乳されるが、生まれる子牛はオスメス半々の確率だ。オスの子牛は必然的に肉牛として肥育されることになる。つまり、酪農と畜産は一体関係にある。

しかし、道民に酪農王国という共通認識はあっても、現実はかくも非情な世界。牛乳も牛肉も下位のランキングで、産地としては落第点である。これでは未来永劫〝日本の食料供給基地〟のままである。他県人から見れば「北海道は食料を生産してくれるありがたい地域」となる。道庁や農業団体は「北海道は日本の食料供給基地」と位置付けているのだから、その悲願は取りあえず達成できたことになる。

しかし、産地にありながら地元食材を活かす調理法の工夫のなさは考えものだ。素材のまま本州に送り続け、あるいは本州資本の道内工場へ送り続けていたわけだから、北海道は儲かりっこない。今日も生乳や牛肉は本州資本の加工場へせっせと運ばれていくのだ。

北海道には豊富な食材があっても食べ方の工夫がない、つまり〝食文化〟がないといわれる。本州からの旅行者に「代表的な北海道料理ってなに?」と尋ねられても返答に困り、挙句の果て「ジンギスカンに札幌ラーメン」と答えてしまう。何ともお粗末な珍回答か。豪州産やNZ産の羊肉の消費拡大に貢献してしまうことに。なるほど札幌ラーメンも全国的に有名だが、地元産小麦使用の麺造りはまだまだ端緒についた程度で、結局は外国産の消費拡大に貢献するハメに。

札幌市内にはハンバーガーショップがあまたあるが、アメリカ産牛肉(小麦も)をせっせと平らげている有様だ。どこかおかしい北海道人の食性。北海道の農畜産物も海産物も、素材がいいからそのまま〝焼く・煮る・炒める〟で調理するだけ。これでは北海道料理なるものは確立しない。万事素材のまま食べて、素材のまま本州送りでは芸がなさ過ぎる。それを延々と、だ。

数字だけ見れば、道民の食生活は地産地消から程遠く、まさに遠産遠消の態で産地らしからぬ数字だ。しかも、牛乳の消費拡大策として電通を使い、この30数年多額の広告宣伝費を投じて牛乳の消費拡大キャンペーンをしてきたにもかかわらずに、だ。長年農業の周辺を取り上げてきた筆者としては〝寂しい数字〟に見える。打開策はないか。

牛肉のレシピ本を全世帯に無料配布する。米国産、豪州産牛肉と同額で提供する「道産牛肉デー」を全スーパーで展開する。ホクレン直営で「ハンバーグ専門店」、マクドナルドやロッテリアの向こうを張り「ハンバーガーショップ」を展開する等々、大消費地・札幌で新しい風を吹かせてはどうか。思い出してほしい昔日、ホクレン直営の〝もうもう亭〟があったではないか。

TPP突入でやがて厳しい時代を迎える。勝ち残るためには何らかの工夫が必要だ。北海道人も本気で〝食おこし〟をやらなければならない。やるのなら今だと思うのだが。

投稿者について

山田 勝芳

山田 勝芳

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留萌市生まれ(1952年)の札幌育ち。地元出版業界にどっかり根を下ろすこと40年。外に対しては「本州資本に対抗する視点、脱・植民地の視点」、内に対しては「真に豊かな北海道共同体づくり」という理念の下、実体験に基づく北海道論を展開。現在、月刊ISMとイーハトーヴを主宰。

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