kizi08
830 Views

フクシマあれから5年、風評被害今なお


東日本大震災から5年目を迎えた。原発事故直後の福島への熱い思いはどこに置き忘れてしまったのか、「被災地よ、ガンバレ」の意識が遠のいている。それでも折に触れ、新聞やテレビは福島の現状を伝えるのだが、国民の反応は鈍い。嗚呼、なんと安っぽい連帯感だったのか―、今それを感じている。

その典型がソフトバンクの孫社長だ。原発事故を目の当たりにして間髪いれずに脱原発を唱え、再生可能エネルギーの転換を声高に訴えていたのだが、現在は大きく後退。東電とコラボしてこの4月から〝東電〟の電気を売るのはなぜか? 5年の歳月が流れ、みんな福島連帯の意識が遠のいているのか。

避難地区の一部帰還も始まっているが原発事故からの復旧はまだ遠い。元通りにはならない。原発の恩恵を貪ってきた、ひとりの日本人として申し訳ない気持ちでいっぱいだ。こうした感情をことばで表すことも安っぽい。引き剥がされた故郷と住民、そこに定住したくとも定住できない歯痒い状況が続いている。未だ9万人以上の住民が帰還できていない。この事故がもしも北海道で起こっていたら、今はどうだったろうか?

風評被害で農林漁業が打撃を受ける。国や東電から果たして「補償」が現在でも正しく実施されているのか。この一連の復興状況はすべてがこの先の日本の教訓となるのだ。約束事は口先だけであってはならないことは明白だ。

震災直後、福島市在住の詩人・和合亮一さんが書いた詩「決意」を紹介する。福島県人の気丈さ、根っからの福島県人の気骨が伝わってくる。幕末に死闘を演じた会津藩の地だもの、福島県と福島人はまさに苦楽を共にする運命共同体だ。

 

福島に風は吹く

福島に星は瞬く

福島に木は芽吹く

福島に花は咲く

福島に生きる

 

福島を生きる

福島を愛する

福島をあきらめない

福島を信ずる

福島を歩く

 

福島の名を呼ぶ

福島を誇りに思う

福島を子どもたちに手渡す

福島を抱きしめる

 

福島と共に涙を流す

 

福島に泣く

福島が泣く

福島と泣く

福島で泣く

 

福島は私です

福島は故郷です

福島は人生です

福島はあなたです

 

福島は父と母です

福島は子どもたちです

福島は青空です

福島は雲です

 

福島を守る

福島を取り返す

福島を手の中に

福島を生きる

 

福島に生きる

福島を生きる

 

福島で生きる

福島を生きる

 

福島で生きる

福島を生きる

 

和合亮一さんの詩には、福島人の不退転の決意がにじみ出ている。あっさりと故郷を捨てて他所に行ってしまう北海道人に果たして、福島人の土着した精神性を解せるであろうか?

札幌にいても福島県の風評被害の一端を見ることができる。スーパーの生鮮野菜売り場では「福島産」は買い物客から敬遠されている。自己批判的にいえば、原発事故以来、福島名産の白桃をあまり食べていない。隣の茨城県産もまた然りだ。サツマイモは他県産、確実に手に取る頻度が減ったのだ。

スーパーに行き買い物客を見ていると、福島産は買わないで他の産地のモノを選んでいる。人々の無言の選択。それほど福島の原発事故の影響は大きい。〝放射能汚染〟に対する不安が常に付きまとう。県漁連によれば、年間の出荷額は事故前の150億円に対し、現在は10億円だ。北海道と比して漁業生産額はあまりよくないのだが数字には端的に表れている。

全国各地の原発がこれから順次稼動体制に入っていく。原発立地の自治体は「再稼動容認」を決議するが、福島の現地を視察した上での容認なのだろうか? 我らが北海道の泊村や高橋知事も現地視察したのだろうか? そして、原発立地の住民たちも現地を見たのだろうか? 一方で、COP21を機に懲りない人間たちは温暖化対策には原発が一番と息巻く。なんとも愚かしい人間の性。経済至上主義の人、人、人…。

第2次、第3次産業はその土地を離れ再出発は可能だが、1次産業は土地を持って引っ越すことは不可能だ。海も、山も、平地もまたしかり。第1次産業はまさに土着した産業である。そこでしか成り立たない。それゆえ原発事故は生産活動に甚大な打撃を与える。しかし、全国どこの原発も農林漁業で生きているど真ん中にある。原発の恩恵を受ける都市住民や他産業界はその事実を直視しなければならない。

この国に生まれ、この国に在り、何が正しいか、しかと見届けたいと思う。いずれこの稿の続編を書こう。

投稿者について

山田 勝芳

山田 勝芳

url: http://ihatov.bizhttp://monthlyism.web.fc2.com
留萌市生まれ(1952年)の札幌育ち。地元出版業界にどっかり根を下ろすこと40年。外に対しては「本州資本に対抗する視点、脱・植民地の視点」、内に対しては「真に豊かな北海道共同体づくり」という理念の下、実体験に基づく北海道論を展開。現在、月刊ISMとイーハトーヴを主宰。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です