トマト収穫
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ある、トマト農家のお話し


皆さん こんにちは!

美味しいサラダを追い求めている(?)経営コンサルタントの境です。

 

今日は、あるトマト農家さんのお話しをさせてください。

その経営者は、自らことばを発することが少ない、物静かな方です。

北海道の西にある小さな農村で、奥様と数名のスタッフとでミニトマトを生産しています。

私との出会いは、6次産業化を進めている方の紹介でした。

紹介者は洋食店のオーナーシェフです。彼曰く、あらゆるトマトを食べてきたけれど、これだけのトマトには出会ったことがない、同じ地域でも突出している、そんなことを仰っていました。どれだけ違いがあるのか、食べる前の私には想像もつきませんでした。

かくして、今から4年前に、そのトマト農家を初めて訪問しました。

うむ。確かに味が濃くて旨いトマトです。収穫が始まる7月から10月まで、毎月通いました。季節によって差はあるけれど、いつ食べても旨い。というより、今まで食べたことが無いのです。フルーツトマトに分類される品種なので糖度が高いのですが、単に甘いだけじゃなく、旨みが凝縮されている感じです。

比較するため、八百屋さんが近隣農家から仕入れたトマトをシェフの店に持ち込んでくれました。それは、日頃食べてきたトマトと大差ない代物でした。

何が違うのか?

そんな問いに、物静かな農家さんは「与える水を抑えている」としか教えてくれません。

たったそれだけのことで、こんなに違いが生まれるものだろうか??

 

数年前から、その農家さんのトマトは、新宿や銀座の百貨店に並んでいます。

彼の名前付きで、小さな専用の棚も設けられています。

でも、百貨店に並ぶまでの間に、いろいろなことがありました。

そもそも、彼はそんなことを望んではいなかったのです。

何故なら、欲がないのです。生活出来ればいいんだと。自分だけ特別扱いされることは望んでいないのだと。だから、直接取引を希望した百貨店サイドの八百屋さんに対して、農協を経由する取引とすること、自分の名前を全面に出す売り方はしないこと、このふたつが絶対条件だったのです。

百貨店専属の八百屋さんは、数十年の間、自ら全国の農家を歩き、確かなものだけを選びぬいてきた自負がありました。いまどき珍しいと思います。実直に現場を歩いて商品を選ぶ、そんなバイヤーが減って久しい昨今ですから。なので、バイヤーさんには譲れない条件がありました。

最終的に、ふたつ目の条件はバイヤーさんの主張が勝り、彼の農場の専用棚が出来たのです。

 

 

彼の農場には、後継者がいません。

彼も、自分の技術を誰かに継承することを諦めているようです。

生活はとても安定してて、蓄えもあるので、あと数年で農場を閉めるつもりだとか。

勿体ないお化けが出てきそうな、とても残念な話しです。

だれか、彼の技術と農場を引き継いでくれる人はいないのだろうか?

そんな気持ちが私のココロに湧きおこってきます。

 

農業を第三者に引き継ぐことは、一般企業と同様、優しい話ではありません。

でも、これだけの技術が埋もれてしまうのは、日本の社会にとって大いなる損失だと思います。

東京や大阪の町工場でも、優れた技術を継承することが難しいと言われてきました。

それと全く同じ現象が、農業においても生まれています。

 

もしも誰か、彼のトマトに賭ける情熱を引き継いでみたい、という人が現れてくれるなら、その実現に向けたあらゆる手立てがあるのですが、、、、

 

北海道では「継承用法人設立方式」によって農業を第三者にバトンタッチする方法が注目されつつあります。

事業を誰かに渡したい現役農家と、農業経験は浅いけれど長く農業を営みたい希望者が、共同で新法人を設立して運営しながら、現役者の技術やノウハウを学び、ゆるやかに農業経営をバトンタッチしていく手法です。これによって、互いに信頼を深めながら、安定した農業経営を持続させるわけです。

 

農業に限りませんが、事業を誰かに渡す(事業承継といいます)うえで最も大きな壁は、現役の経営者と、後継候補者との間の信頼関係です。

現役者が高齢になればなるほど、若者の考え方や行動に対して、ついつい否定したくなるようです。「今どきの若いモンはイカン!」という具合に。

でも、若者にも言い分があるのですね。これが血の繋がった親子なら、まあ仕方ない、という感じで互いに妥協できるのですが、義親子とか親戚となると、途端に妥協が難しくなります。第三者ともなると、もう大変。

譲り受ける方にも多いに問題があります。そもそも、現役経営者ほどの情熱が湧かない人が少なくないので、艱難辛苦してきた経営者の想いに向き合うことが出来ないのです。今の経営が安定していれば尚更のことですね。

このギャップをゆるやかに埋めながら事業を引き継ぐ手法が望まれるわけです。

 

10年以内にはこの世から姿を消してしまうかもしれない、伝説のミニトマト。

 

引き継いでくれる方が現れることを心の奥で願いつつ、今日も私は、今やるべき任務を遂行しています。

投稿者について

境 毅

境 毅

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糞尿で世界を救う事を夢見る、愛妻家でゲーマーなコンサルおじさん。

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