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アウトサイダーこそ本流


 2015年(平成27年)を振りかえると、今年は酪農家の自主流通活動をサポートする仕事から始まり、変革する農業の潮流を感じた一年だった。あえて自主流通という表現をしたが、農業の業界用語ではアウトサイダーという。そこで改めて、アウトサイダーの意味を調べてみたところ、「仲間に加わってないもの」、「余計なもの」、「社会常識の枠にはまらないもの」など、どれをとってもイメージの悪い意味合いばかりだ。これほどのレッテルを張られるわけだから、自主流通に踏み出した酪農家たちは、並々ならぬ思いがあって決断したということは容易に想像がつくだろう。誰しもなるべくなら現状を維持したまま、生活や仕事の安定を望むわけで、わざわざ好き好んでアウェイ(逆境)な世界に身を投じるものなどいないはずだ。

国策1:6次産業化で所得向上を!

 さて、いわゆる6次産業化法が施行されたのは、いまから4年前の平成23年3月1日のことだ。その附則の一部にはこのように書かれている。「我が国の農林漁業及び農山漁村は内外の様々な問題に直面しており、農林水産物価格の低迷等による所得の減少、高齢化や過疎化の進展等により、農山漁村の活力は著しく低下している。・・・地域資源を活用した新たな付加価値を生み出す六次産業化の取組と、地域の農林水産物の利用を促進することによる国産の農林水産物の消費を拡大する地産地消等の取組が相まって、農林漁業者の所得の確保を通じて農林漁業の持続かつ健全な発展を可能とするとともに、農山漁村の活力の再生、消費者の利益の増進、食糧自給率の向上等に重要な役割を担うものと確信する。」
要するに、農家は作物の生産だけではなく、消費者に直接販売したり、加工品で付加価値を付けたりして、自らの所得を向上させなさいということを言っているのだ。

国策2:農協改正で儲かる農業に!

 一方、来春には農業協同組合法が一部改正される。改正案の中身はおおきく2つあり、①「地域農協が、自由な経済活動を行い、農業所得の向上に全力投球できるようにする」②「連合会(※北海道でいうホクレン)・中央会が、地域農協の自由な経済活動を適切にサポートする」となっている。これは農協(JA)が自由経済ではなく、一党独裁的な社会主義体制の上に成り立っていることを政府が認めたことと等しい。しかし、一般市民の方たちは何のことやらさっぱり意味が分からないと思うので、これを分かりやすく説明すると、農協(JA)は親組織のことばかり意識しないで、組合員である農家の所得向上に努めなさいということである。もっと分かり易く言うと、農協(JA)は自分たちの儲けばかりを考えないで、農家が儲かるように努めなさいということだろうか。

国策3:TPP対策で農業の体質強化を!

 さらに、TPP=環太平洋パートナーシップ協定が大筋合意され、これにより農産物の自由貿易が加速するものと思われる。~平成27年度補正予算案では、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の対策費3403億円を盛り込んだ。このうち3122億円が農林水産省分で、農業の変革や体質強化を促すとしている。目玉は505億円の基金を積んだ「産地パワーアップ事業」だ。コメや果樹・野菜などで収益向上計画をつくった地域の取り組みに対して、高性能機械の導入や施設再編を支援し、高収益作物への転換を促す。畜産分野でも収益向上の取り組み支援に610億円の基金を新設する。
(毎日新聞2015年12月18日より抜粋)

だからアウトサイダーこそが時代の本流だ!

 このように、6次産業化法、農業協同組合改正法、TPP参加表明というように、まさに農業は激変の時代に突入したのだ。従来のJA依存の在り方から、農家が主役の新たなビジネスモデルへ転換させようという政府の狙いが見える。すなわち、アウトサイダーこそが時代の本流であり、アウトサイダーという表現そのものがナンセンスだと言いたい。そんなアウトサイダーを余計なものと考えている一部業界の方々は、時代の変化に気づかない、あるいは気づいても認めたくない古い考え方の持ち主だ。まさにその考え方こそが、農業の衰退を招いているということを自覚すべきではないだろうか。
 そして、彼らはこぞってTPP反対を唱える、とにかく何事にも反対する論客だが、世界のグローバル化はITの普及により、もはや止めることなどできないはず。若者はSNS(ソーシャルネットワーク)で世界中に友達を作れる時代であり、これは否定しようにも止められない現実がある。もしかすると、中でも賢い論客は、現代文明を止めるため、お隣の国のようにITを内部統制しようとでも言うのだろうか?しかし、そんなうるさ型の論客たちも地球温暖化やISILに代表されるテロ問題となると、途端に世界がひとつになって解決しなければならないと声高に唱える。なぜ、TPPとなると自国の利益だけを語るのだろう??
 この先、農業が持続できるかどうかは、就きたい職業として若者から選択される必要がある。そのためには、経済的に自立した産業として変化していかなければならない。従来の補助金依存の経営から脱却して、本当の意味で価値に見合った対価を得られる収益構造を作り上げなければ、農業の未来を描くことはできない。そういった意味で、今春、自主流通に向けて船出した酪農家が果たした役割は大きい。彼らの経営は劇的に改善され、また、この動きに触発された酪農業界全体に変化の兆しが見え始めたからだ。ひとつの突飛な考え方やひとりのはみだし者が世界を変えることもある。アウトサイダーを余計なものとしてではなく、閉塞した農業に風穴をあける救世主として捉えてみてはいかがだろうか。

投稿者について

大沼 康介

大沼 康介

url: http://asa.hokkaido.jphttp://ksk.hokkaido.jp
北海道札幌市生まれ(1969年)石狩市在住。農業をサポートする仕事に携わって10年、知れば知るほど農業界の奥深さを実感。 多くの起業家が生まれる土壌を北海道に作りたい。 北海道の開拓魂が日本を変える力になると信じて、起業と新産業の創出を後押ししていきたい。 新規事業のサーバーとしての役割を発揮できるよう、自分自身も起業家精神を忘れることなく邁進していきます!

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