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フェアトレードの視点に立つ


その昔、アメリカ南部の綿摘みは過酷な労働だった。黒人奴隷の家族(女も子どもも)が駆り出されて、朝から晩まで綿摘みの労働を強いられた。指先は棘でたちまち血染められる。そうして摘まれた綿はミシシッピー川でニューオーリンズまで運ばれ、ここから世界各国へ輸出された。かつて映画で観た、いにしえのアメリカの光景だ。

現代でも途上国の農場では女、子どもが重労働、低賃金労働を強いられている国、地域がある。例えばカカオやコーヒー、花卉栽培など。例えば、花。ビニールハウスの中で農薬が散布され(食物でない分、規制値がない)、気管支炎を患うときもある。手がただれる女や子どもも出るときがある。日常、われわれ日本人はそんなことを気に留めることなく、コーヒーを飲み、チョコレートを食べ、切花を生ける。

それではダメだと、ヨーロッパで「フェアトレード」の思想が生まれた。「農園の労働環境はどうか」、「子どもを働かせていないか」、「賃金はどうか」、それらをチェックしてから原料を購入するメーカーが現れた。その思想は日本社会でも芽生え始めてはいるが、多くの消費者は残念ながらメーカーの姿勢に無関心だ。消費者が無関心な分、メーカーも方策を講じない。

話は横道にそれるが、筆者は子ども向けに「消費者の心得」を学習させたり、学生に「消費者学」を学ばせる大学があってもいいと思うのだ。賢い消費者、賢い国民になるためにはある程度の知識習得は必要である。

何事も無関心は問題だ。TPPの是非が沸き起こっても「安く輸入されるのならいいじゃないか」となる。反対世論が盛り上がらない原因はそこだ。物事の本質を見抜こうとはしないのだ。地方都市の消費者協会は「TPP反対」を決議したが、札幌消費者協会は賛否が分かれて決議に至らなかったことをご存知だろうか。札幌人に北海道共同体という共通認識を持ち得ないのだろうか?

ユニクロやニトリに無批判がおかしいのだ。新聞やテレビの大マスコミが成長企業として持て囃した時期がある。筆者はそのころから冷ややかに企業ポリシーを批判してきた。途上国の安い労働市場に製造拠点を設け、国内の店舗で他のメーカーよりも安い価格で売る。その発想自体がナンセンスである。現代の新しいスタイルの植民地主義的な発想だ。企業の国籍はどこか?企業の本籍地はどこか?

本題に戻る。フェアトレードの視点は先進国と途上国の問題に限らず、国内の異なる産業間にも通じる。本来、工業製品と農産物を同じ土俵で価格競争はできない。TPP参加となれば、同じ土俵に立つことになる。農業は労基法や最賃法の適用外、それだけ労働時間も長く、低い時間給になるということだ。それでも農家は国民の命をつなぐ糧を生産し続ける。それが日本の農業、農家の姿だ。

晴耕雨読、雨が降れば農作業は止まる。その分、晴れたら長時間作業することになる。誰も労基法違反とはいわない。そして、産業間で所得格差があるから、農業に補助金を出して、営農を守り、農業の持続性を保つ。農業のそうした面を理解しなくてはならない。

農協批判に立脚し、農業全体を語るな。農協があろうがなかろうが日本の農業は守っていかなくてはならないのだ。外国との取引でも、国内での取引でもフェアトレードの視点に立って、物事を決めなければならない。筆者はそう思うのだ。公正な貿易、公正な取引、こんなことは当たり前のことだ。

投稿者について

山田 勝芳

山田 勝芳

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留萌市生まれ(1952年)の札幌育ち。地元出版業界にどっかり根を下ろすこと40年。外に対しては「本州資本に対抗する視点、脱・植民地の視点」、内に対しては「真に豊かな北海道共同体づくり」という理念の下、実体験に基づく北海道論を展開。現在、月刊ISMとイーハトーヴを主宰。

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