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農業王国幻想論 真なる王国へ


「北海道は農業がいい」、「食料自給率は200%だ」、「全国一の農業生産高だ」、「乳牛頭数全国一で生乳シェア50%超だ」など北海道農業の優位性を称えることばは多い。豊かな生産量に裏打ちされて食品加工業が第二次産業の中心で、北海道ブランドを揺るぎない地位に押し上げている。だから自ずと、農商工連携とか農業6次化などの政策が活発に議論されているのだ。

道と道経連の共同提案「フードピア構想」が、国の戦略特区からこぼれ、府県の失笑を買った。「農業に強い北海道が何故…」といった按配だ。つまり、他の模倣ばかりで独自色が微塵もないのだ。落選をどう総括したのか、その情報も伝わってこない。そんなことでへこたれるでない!

オランダといえばフードバレーで、「これに倣え」とばかりに、フードバレー構想が各地で持てはやされる。しかし、考えてみよ。オランダは主食たる小麦生産を止め、農業の基本を壊した国。農業の高付加価値化、いわば農業の工業化をとことん追求した国柄だ。元来、北海道の農業とは相容れないスタイルだ。現在議論されている農商工連携、農業6次化も2、3次産業の儲けにはつながるが農業側の利益が構想されていない。これでは何のための発展策か。

北海道人は地元農業の豊かさや、府県と比しての優位性だけに目を奪われがちだが、欠けている視点がある。そう、個々の農家経済の実態である。離農者が絶えない現実がつぶさに〝真実〟を物語っている。実のところ「北海道は農業王国」は、われわれが最も陥りやすい幻想なのだ。磐石な基盤に立った、非の打ち所のない農業王国というよりも、北海道の農業はきわめて脆弱な経営実態なのである。

北海道は広大な耕作地を有する。そのうちかなりの割合で小麦、てんさい、牧場(生乳)が占める。小麦やてんさいは政策作物といって、国の補助金率が高い分野だ。生乳もまたしかり。生産する側も、直接消費者に売られない生産物だから、殊更に消費者を意識するでもなく、せっせと生産に勤しむ。生産者に叱責を受けるかも知れないが、製粉、製糖、乳業会社の下請けみたいな農業スタイルだ。食管法は廃止になったとはいえ、米作もまたしかり。

その点、補助金の少ない野菜や果物の農家とは随分スタンスが異なる。野菜農家などは消費者が関心ある「安全・安心」を意識した減農薬、有機農業を試みたりする。直売所や道の駅で目に付くのは、生産者の名前が載った野菜や果物が中心だ。「売れる野菜」を意識する。消費者を味方につけると、農業はもっと強くなる。農業にやりがいも感じるようになる。これまで消費者から遠いところに農業があった気がする。

離農が止まらない。国の農政でも、道や地方自治体の政策でも、農業団体でも離農はくい止められなかった。TPP前夜で先行き不安や、円安による飼料用穀物、農業用資材の高騰でさらに離農が加速している。注がれた農業支援策の〝大金〟はどこに使われたのか?はっきりといえることは、農家経済はやせ細っても「農業」でしっかりと太った輩たちがいたという事実だ。これからの農政は、農家経済が良くなることに比重を移さなくてはならない。

また、失敬な言い方ではあるが、農家自身も旧態依然とした小作人的営みから脱却し、名実ともに自立した生産者へと変貌しなければならない。農業を踏み台にした発展構想の徘徊が目立つご時勢だが、生産者の一大奮起に期待したい。個々の農家経済の安定があって、真の農業王国になれるというものだ。農業を喰いものにする輩を許すではない!

投稿者について

山田 勝芳

山田 勝芳

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留萌市生まれ(1952年)の札幌育ち。地元出版業界にどっかり根を下ろすこと40年。外に対しては「本州資本に対抗する視点、脱・植民地の視点」、内に対しては「真に豊かな北海道共同体づくり」という理念の下、実体験に基づく北海道論を展開。現在、月刊ISMとイーハトーヴを主宰。

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